Friday, December 3, 2010

北イタリアの食文化

トスカーナ地方を後に、その後さらに北に進みました。イタリアの人々は「北イタリアの料理が好きだ、南イタリアの食はどうも。。。」などと言うことも珍しくなく、イタリアでは地域ごとに食や文化の違いがはっきりしています。そして、それぞれの文化に誇りを持っています。イタリアの人に「北へ行く。」と言うと、「北部にはお菓子屋さんがたくさんあるから、是非お菓子を食べなさい。」と言われました。クリスマスに食べるケーキのようなドライ・フルーツいっぱい入ったパン、パネトーネも北部のものです。

私が北イタリアで訪れた街はヴェローナとヴェネツィア。ヴェネツィアはその名を知らぬ人はいない程有名な観光地ですが、もうひとつの街ヴェローナはロミオとジュリエットの家があることで知られています。ここヴェローナでは思いがけず、最高においしいパスタに出会いました。

旅をして思うのは、ガイドブックはあまり当てにならないということです。参考にならないとは言わないのですが、ガイドブックで探した店に向かう途中に、他に地元の人で込んでいる、おいしい匂いがするレストランがあったら、勇気を持ってその店に飛び込んだ方がおいしいものを食べられる可能性が高いと思います。この店にもそのようにして出会いました。昼間ちらりと覗いた時には、地元のおじさん達で賑わっていました。観光客がいる気配はゼロ!ここで引き下がってしまったのが、間違いでした。夜、またそのレストランに戻りましたが、その時点でお客さんはゼロでした。怖じ気づいてすぐ近くにあった、アメリカのガイドブックに「地元客が詰めかける」と書いてあったお店につい入ってしまいました。メニューを見ると5カ国語の表記があり、自分が間違った選択をしたことにすぐに気がつきました。料理はまずいという程ではないのですが、この程度の料理はどこででも食べられるというものでした。余りにも気持ちが満たされず、おじさん達が食事を楽しんでいたお店で2度目の夕食を取ることにしました。片言のイタリア語でパスタだけ食べてもよいか聞くと、気持ちよく承諾してくれました。メニューを見ると1/4リットル・カラフェのプロセッコがなんとたったの3ユーロ。飲みながら、パスタを待つことにしました。泡の立ち上るプロセッコを一口飲むと、おいしい。爽やかな中にも果実味がある、上品なプロセッコです。食前酒のおいしさに期待も高まります。サービスも丁寧ながら、適度に放っておいてくれる、一人客には有り難い気配りです。そして待つことしばらく、フレッシュ・ポルチーニの手打ちパスタがやってきました。一口食べると、まさに手打ちのパスタでしか味わえない、もっちりとしていながら、適度な歯ごたえがある食感。そして味わい豊なキノコのソースが太めのフェットチーネにバランス良く絡みます。これぞ本物のパスタ。不本意な夕食を取るという残念なことがありましたが、お陰でこの旅一番のパスタに出会いました。

ヴェローナからヴェネツィアは各駅停車で1時間ばかり。近郊に住む地元の人たちに混じってローカル線に乗り、ヴェネツィアに向かいました。ヴェネツィアは世界有数の観光都市。レストランも観光向けが多いと言われていますが、探せばあるもので、幸いにもヴェネツィアらしい料理を手頃な価格で味わうことができました。ヴェネツィアにはバカリと呼ばれるバーがたくさんあり、スペインのタパス・バーのように小さな小皿料理とお酒を楽しむことができます。私は道すがら、混み合っている幾つかのお店に入ってみましたが、観光地で観光客向けでないお店に行ったこともあり、言葉が通じないせいか、初めの2件では追い返されてしまいました。でも旅の神様は私を見捨てなかった!最後の3件目で先にカウンターで飲んでいたカップルが困っている私を見て、通訳を買って出てくれたのです。やっとカウンターに席をもらうことができました。お隣さんと世間話をしながら、タラのペーストをつまみにワインで一息。ヴェネツィアのバー文化をほんの少し楽しむことができました。ちなみにお代はワイン、パン、軽いランチに十分なタラのペーストの前菜で1000円程度でした。驚きの手頃さです。少々ハードルは高いのですが、ヴェネツィアに行ったら、是非地元で人気のバーに行ってみて欲しいと思います。

そして忘れてはならないお菓子です。ヴェネツィアではそれはもうそこここにお菓子屋さんがあります。私は目を引いた路地裏にある店で、粉砂糖がたっぷりまぶしてあるパイを買ってみました。軽く、非常に繊細な口当たりで、おいしかったです。迷路のように入り組んだ小道で偶然見つけたので、残念ながら店の名前や場所を覚えていませんが、おいしそうなお菓子屋さんを見つけたら、フランスとも南イタリアとも違う、北イタリアならではの洗練されたお菓子を味わってみて欲しいと思います。

Trattoria TROTA
住所:Via Trota 3-37121, Verona, Italia
電話:045-8004757

La Bottega Ai Promessi Sposi
住所:Calle della'Oca 4367 Cannaregio, Venezia, Itaia
電話:041-2412747

ローマ・トスカーナ地方 食の旅

忘れないうちにヨーロッパで食べたものについてお伝えせねば!と思っているうちに、アメリカでは感謝祭があり、休みが明ければ、もう師走になっていました。感謝祭が終わると街はもうクリスマスムード一色です。クリスマスがやって来る前に、イタリアで食べたおいしいものの話をしたいと思います。

イタリアへ行ったら皆が絶対に食べたいと思うもの、それは本場のジェラートでしょう。もちろん食べて来ました。数あるジェラテリアの中でもダントツでおいしかったのは、ローマの老舗ジョリッティです。目移りする程数多くのフレーバーがありますが、ピスタチオやチョコレートなど、どのフレーバーをとっても素材そのものの自然な味が引き立ち、滑らかなジェラートの食感と絶妙の組み合わせです。そこに生クリームを添えて食べるのがイタリア流。やはり本場の味は違うと思わせくれた贅沢な味でした。

ローマの次にフィレンツエとその近郊を訪れました。トスカーナ地方はその豊かな食文化で知られています。長い旅を振り返ってみると、やはり一番美味しい物を食べたのは、ここトスカーナ地方だったように思います。レストランでの食事はもちろん、この地で驚かされるのは街で手に入る食材のレベルの高さです。日本やアメリカでは高級食材店でも手に入らないレベルの生ハムやチーズが、スーパー・マーケットで数百円で販売されています。それにワイン、パン、果物を添えれば申し分の無いディナーの完成です。ワインもまた高品質のものが手頃な価格でずらりと並んでいます。特にスーパー・トスカンと呼ばれる稀少なワインが地元では手頃な値段で手に入るので、是非試して欲しいと思います。重すぎず、軽すぎず、風味豊なスーパー・トスカンは正にトスカーナの食を楽しむのに最適なワインだと思います。

フィレンツェから足を伸ばし、近郊の小さな街、シエナとサンジミニャーノにも行って来ました。これらの街には電車が通っていないため、バスを利用しました。サンジミニャーノへ行くためにはバスを乗り継がねばならず、交通に不安があったのですが、行ってみると難しいことはありませんでした。乗り継ぎ地点では鉄道の駅と同じように、次にどの便が来るか、分かりやすく電光掲示板に表示があります。

バスを乗り継ぎ、サンジミニャーノに降り立つと、ものものしい壁が街を取り囲んでいます。サンジミャーノは中世の趣をそのままに残す、城塞都市で、14本の塔が今に残されています。街の周辺はどこまでも続く葡萄畑で、眺めても眺めても、見とれてしまう程、静かな景色でした。時を止めたようなこんな場所が現代に残っている事に驚くばかりです。この街をひと目みるために、遥々やって来た甲斐があったなあと思いました。

そこから更にバスで行くこと数十分。もうひとつの古都シエナに行って来ました。シエナには「世界一美しい」と言われるカンポ広場があります。本当に美しい広場でした。観光客で溢れていますが、その完璧なまでの広場を前に、そんなことなど全く気になりませんでした。そしてカンポ広場から、広場を取り囲むように続く道を伝って行くと、もうひとつのシエナの見所、大聖堂にたどり着きます。この大聖堂はフィレンツェのドゥオモ程有名ではありませんが、その荘厳な佇まいと存在感はフィレンツェのドゥオモ以上かもしれません。繊細で緻密な姿は壮麗そのものです。シエナに行くことがあったら、カンポ広場だけでなく、このドゥオモも是非見て欲しいと思います。

そ・し・て、忘れてはならないのは、もちろんおいしいもの。食べて来ました、感じて来ました、トスカーナの実力を!本当はトスカーナ地方の名物・ビステッカ・フィオレンティーナというTボーンステーキを食べたかったのですが、注文は何と一キロからということで、ここはあきらめて、トスカーナ風のステーキを頂きました。上質の赤身の肉の表面をさっと炙ったステーキにルッコラとパルミジアーノを削ったものがたっぷりと載ってきます。血の滴る新鮮な肉にパルミジアーノの濃厚な風味、ルッコラの爽やかさが絶妙です。これを赤ワインと一緒に味わえば、気分は最高。イタリアン・スタイルのステーキを堪能しました。アメリカではステーキといえばシンプルに焼いて、塩こしょうをするくらいなのですが、これからは上質な赤身が手に入った時には目先を変えて、イタリア風に頂くのもおいしいなあと思いました。ワイン、税、チップを入れても3000円くらいだったと思います。大満足でした。3000円でこれ程においしい食事を取れる場所は、世界を見ても余り多くはないのでは無いでしょうか。VIVA ITALIA!

GIOLITTI
住所:Via Uffici del Vicario 40, Roma Italia
電話:06-6991243

La Taverna di Cecco
住所:Via Cecco Angiolieri, 19, Siena, Italia
電話:0577-288518